ジョージ・ナカシマ

木はすごいと思う。伐られた後も、木は生き続けるのだ。年を経た木は使い込まれてその美しさを増すが、それこそが木は生きているということの確かな証しだろう。プラスチックには命が宿っていないから、どんどん薄汚れてゴミ化していく。木の生きてきた長い年月を思い、その木の特性を極限まで生かした家具・・・それがジョージ・ナカシマの家具といえる。

コノイドチェアジョージ・ナカシマ(1905~1990)は、ワシントン州のシアトルで育った、アメリカ国籍の日系2世だ。大学では森林学と建築学を学んだ。29歳のとき、帝国ホテル建設のフランク・ロイド・ライトについて来日。その後アントニン・レイモンド建築事務所に入り、軽井沢やインドで建築の仕事に携わった。35歳でアメリカに戻るが、建築の仕事に失望し、自分が最初から最後まで統合できる家具デザイナーとして歩みだした。ペンシルバニア州ニューホープの広大な森のなかに工房をつくり、その後の生涯を木と対話しながら美しい家具を作り続けた。1964年、ナカシマ59歳のとき、彫刻家流政之の勧めで香川県高松を訪れた。ここで地元の職人たちの集まり「讃岐民具連」と出会い、自ら参加。地元の家具メーカー「桜製作所」の協力を得て、1968年から計8回ジョージ・ナカシマ展を東京で開催した。1990年に亡くなった後も、ジョージ・ナカシマの家具はニューホープの工房と高松の桜製作所の両方で作り続けられている。
実は、香川県高松はわたしの故郷である。香川県は以前の知事の意向か、なかなかアートや芸術にうるさいところなのだ。丹下健三設計の県庁や体育館を擁し、庵治石で有名な庵治にはイサム・ノグチや流政之のアトリエがある。わたしの父は仕事柄そういう方々とも交流があり、子供のころから彼らのアトリエにも連れて行ってもらったりしていた。わたしが25歳になったとき、父は「おまえがこれからどう生きていくかはわからないが、結婚するにしろ、一人で生きるにしろ、家具は必要だろう。一生使える家具をつくってやるから大事に使いなさい」といって、桜製作所に制作を依頼した。半年ほど経った頃、ジョージ・ナカシマのダイニングテーブルとコノイドチェア、和箪笥、洋服箪笥、食器箪笥がそろって家に来た時には、その真っ正直な美しさに目を見張ったものだった。以来、わたしのものとなった家具たちは、どこに引っ越そうともわたしの人生にぴったり寄り添ってくれて今日に至っている。父はちょっと偏屈で無口、自分の好きなことしかしないためずいぶん母を泣かせてきたような人だったが、あのときのあの言葉は生涯忘れないだろうと思う。
30代のころ初めてニューヨークに行ったのだが、訪れた近代美術館の地下でジョージ・ナカシマの椅子に出会った時の驚きと喜びはちょっと言葉にはできない。それは地下の薄暗い廊下でひっそりと、しかし毅然と存在していた。
無垢の木はどんなものに形を変えても、大切にさえ扱えばいつまでも生きている。自然をこよなく愛したジョージ・ナカシマは、木と対話しながら、木がなりたいかたちに家具をデザインした。使い手のわたしたちは、やはり木と対話しながら大切に使い継いでいくことがその使命であると思う。

自家製梅ソーダカフェのニューフェースをもう一つ。梅ジュースをソーダで割った「自家製梅ソーダ」(500円)です。猛暑ともいえる最近の天気は、日向を歩くとフラフラになります。それでもこの「梅ソーダ」を飲めばただちに復活すること請け合いです。ピュアな梅のエキスとしゅわしゅわなソーダが溶け合って得も言われぬ世界に運んでいってくれますよ。これも梅ジュースがあるかぎり。なくなれば、また来年庭に梅の花が咲いて、実がなって、収穫した梅を氷砂糖で漬け込んではじめて「梅ソーダ」の登場となります。売り切れ間近。来年が待ち遠しいよー。

Lillian

2 Responses to “ジョージ・ナカシマ”

  • fumiko |

    こんばんは。そういえば……と、カフェメニューが気になり、初めて拝見いたしました。で、ブログまであったのでお邪魔したら、気になる話題がいっぱいのブログ!!!でした。
    『木はすごいと思う。……木は生き続けるのだ』は同感です。
    数年前から家の整理やらをしていて、木の存在を再認識しています。
    覚えていらっしゃるかわかりませんが、樽を分解した板。友達に引き取られていきはじめました。何になるのか楽しみです。
    それに、おひつやおぼんが出てきて、磨けば使えるかも。
    それにしても、ジョージ・ナカシマの家具とは。スゴイです!
    妙なところであなたの芯の強さというか、真ん中にあるモノが納得できた気がします。(ごめんなさい、こんな言い方して。コトバが見つからないんです)
    そうそう、肝心のジュース。やっぱりそうでした。何だかとても嬉しいです。
    なんだか興奮してコメントしてしまいました。
    ところでわかりますかしら?私のこと。失礼いたしました。

  • SUEO MORI |

    写真家・十文字氏のリンクから、初めてこのサイトに立ち寄らせていただきました。
    かつて、仕事場の近所に材木屋があり、昼休みや用事の途次に覗いて、息抜きをしていましたが、ケヤキやクスノキなど板の美しさに、すっかりはまり、当てもなく買い込んだ分厚い板に囲まれて生活するようになりました。
    いつしか、木工家の真似事をするようになり、新宿のデパートでジョージ・ナカシマの作品群に出会った時の衝撃は今も忘れません。
    今春、庵治のイサム・ノグチ庭園美術館を訪ねた帰り、近くのジョージ・ナカシマ記念館も見学したかったのですが、時間切れでタイムアウトとなりました。是非、次回、訪ねたく思っています。

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